第5代会長 崔光礎

薫風の季節をいかがお過ごしでしょうか。
戦後最悪と言われてきた韓日関係悪化の時期に、世界を襲ったコロナ禍は年間1千万を越えていた韓日の人的往来をストップさせ、交流の機会を奪いました。韓国では日本製品の不買運動が起こり、日本では韓国産のパプリカがスーパーから消える事態にエスカレートしました。

両国の関係悪化は、本場の韓食を日本に普及させ、相互理解の一助にしたいと努力してきた私たち韓食業界にとっては自らの生活を左右する死活問題になりました。非常事態を「対岸の火事」ではなく、当事者として受け止める在日韓国人は一日も早い修復を願い、それぞれのフィールドで友好事業に取り組んできました。

関係改善に舵を切ったのは政治の動きでした。3月の尹錫悦大統領の訪日で実現した韓日首脳会談を契機に岸田文雄首相の訪韓でシャトル外交が 12 年ぶりに再開したのをはじめ、G7広島サミットに尹大統領が招待される外交が私たちの目の前で展開されています。息を吹き返した新たな局面、韓日新時代に拍手を送ります。

さて、私の友人に日本の公立中学校で年に一度「韓国理解」の課外授業を受け持つ在日2世がいます。スタートした約 20 年前は「韓国と聞いて何をイメージする?」と生徒に尋ねると、「キムチ、焼肉」としか答が返ってこず、「知っている韓国人はいますか?」と聞くと、「キム・ジョンイル」と返され、言葉を失ったと言います。しかし、他のことは知らなくてもキムチと焼肉が韓国を象徴する食文化としてその当時から認知されていた事実は注目すべきです。在日1世がキムチを守ってきたと言っても過言ではありません。

時は流れ、「冬ソナ」から始まった韓流は、K-pop、コスメ、ファッションなどと形を変えながら完全に日本に定着しています。授業を受ける子どもらの口から K-popアイドルの名前が次々に出て来る時代になりました。「いいものはいい」と素直に認める日本の若い世代の感性がそこにはあります。BTS や「愛の不時着」が世界を巻き込んだのは、韓国文化の水準の高さが受け入れられたからです。在日韓国人とニューカマーと言われる新規韓国人が韓流を下支えしてきたことも忘れてはなりません。

かつてはニンニク臭いと敬遠され、差別にまみれたキムチが今や日本の食卓に上り、他の韓国食材が当たり前のように店頭に並ぶ時代を迎え、当協会の存在価値はますます高まっています。私たちは何をなすべきでしょうか。

当協会は発酵キムチの普及を目的に 2005 年に発足した韓国民団傘下の「キムチネット協議会」から始まり、韓国政府の支援のもとで韓食文化を正しく普及させることを目的とした「民団韓食ネット協議会」に受け継がれました。そして、2017 年に一般社団法人日本韓食振興協会として誕生しました。

草創期から数えると5代目会長に就任した私は、歴代の会長らの努力で広げてきた韓国食文化を日本だけでなく世界に発信していく所存です。マッコリを使ってさびれた商店街を活性化しようという動きも聞いております。健康を第一に考える医食同源に根差した韓食の素晴らしさを日韓グルメフェアで紹介し、地域活性化イベント開催などにも積極的に道を開いていきます。

国と国との関係に揺らぐことのない韓食文化の維持、発展のために私は全力を尽くします。ともに一歩前へ踏み出しましょう。皆様の変わらぬご声援をよろしくお願いいたします。

2023年5月吉日

一般社団法人日本韓食振興協会会長  崔光礎